オーナー社長のための収益物件活用術 会社の経営安定、個人の資産を防衛

はじめに

 平成25年の企業倒産件数は22年ぶりに1万1000件を下回り、前年より減少、アベノミクス以降、景気は回復傾向を示しています。しかし中小企業の約7割が赤字であることが示すように、利益をあげ続けるのは簡単ではありません。今は好調でも、いつ会社の業績が悪化し、社員や自分の収入が減少してしまうかわからない……そんな不安を募らせている中小企業のオーナー社長も多いのではないでしょうか。

 加えてオーナー社長を悩ませるのが、税金の問題です。厳しい環境のなかでどうにか利益を出した企業には、法人税が課せられます。また、これからは資産家への課税強化の時代です。平成27年1月以降、所得税・相続税の最高税率が引き上げられ、相続税については基礎控除額も減額されます。大きなリスクを取って会社を経営しているオーナー社長にとって、せっかく築いた資産が「召し上げられてしまう」ことは、非常に頭の痛い問題です。

 事業の将来に不安があるだけでなく、苦労して会社の利益を出し、個人の資産を積み上げても高額な課税がなされる。こうした状況にあって、どのように会社の経営と自身の収入を安定させ、資産を守り続けていけばいいのかと日々模索しているオーナー社長も少なくないはずです。

 そんなオーナー社長を助ける心強いツールになるのが、収益物件です。私は自身で経営する会社を通じて、これまで数多くの収益物件の売買・仲介・賃貸管理を手掛けてきました。また私自身が一中小企業のオーナー社長であり、この10年間実際に15億円以上を投資して収益物件を活用してきました。それらの経験からオーナー社長こそ特に収益物件を活用すべきであると確信しています。

 収益物件とは、自宅や事務所として利用する不動産ではなく、人に貸して賃料を得るための不動産です。この収益物件によって会社を守り、個人資産を守ることができるのです。

 収益物件活用のメリットは、大雑把にいえば副収入と節税効果(タックスマネジメント)にあります。まず家賃収入を得ることで、本業のスペアタイヤのような副収入が見込めます。物件にもよりますが、例えば1億円の中古木造アパートで年間賃料収入を1000万円程度得られれば、本業が万が一、不振に陥って収入が減少しても補うことが可能です。それだけなら資産を預金や株で持っておき、その金利や配当金を副業と思えば同じだろう、という人もいるかもしれませんが、自らの努力で利益をコントロールできるという点が決定的に違うのです。本書で紹介する「損益判定グラフ」をもとに考えれば、より確実に利益を確保することができます。

 さらに、収益物件には他の金融商品にはない絶大な節税効果があります。

 収益物件の種類(中古か新築か、木造かRC造か、など)や購入契約時の注意点(土地と建物の割合など)、売却のタイミングなどを工夫することで、収益物件は会社や個人の資産を守る節税装置となり得ます。

 他にも節税ツールはいくつかありますが、収益物件ほどオーナー社長に適したものはありません。個人で取得すれば所得税を圧縮できるだけでなく、物件によっては現金と比較して4~5割も相続税を減らすことができます。また法人で取得すれば、法人税の節税で現金を手元に残し、経営資金に回せます。そして節税装置として所有しておきながら、イザというときには売却して現金化できる益出しの自由度も、経営者にとっては魅力です。

 収益物件は、本業の業績悪化、そして増税というリスクに備える〝転ばぬ先の杖〟なのです。リスクを一身に背負い、会社、社員、家族を守るオーナー社長の皆さんにとって、他にはない大きなメリットをもたらします。

 本書では収益物件活用の考え方、物件の見極め方、資金調達、管理運営、出口戦略まで、具体的な例を交えて紹介しました。収益物件を活用した「アパート事業」の基本的な考え方は、拙著『年収1000万円から始める「アパート事業」による資産形成入門』『「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』でも詳しく解説していますが、本書はより「オーナー社長向け」の収益物件の活用にスポットを当てて少し高度な活用術としています。本書で考え方や理論を知っていただき、前著2冊を合わせてお読みいただければ、より立体的に、深く収益物件の活用術を身に付けていただけるのではないかと思います。一人でも多くのオーナー社長の方々が収益物件を活用し、将来にわたる経済的安定を手に入れることができれば、これに勝る喜びはありません。

平成26年8月
大谷義武

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